ボディビルダーにしてトレーナーの北島達也。
北島の体を作り上げたアメリカでのワークアウトとはどんなものだったのか?
ボディビル・ヒストリー後編では、コンテスト出場から、日本のトレーニングの改善点までを語ります。
この記事の目次
コンテストに挑戦!結果は?
<聞き手> アメリカでも、ボディビルダーとしてコンテストに出場されていたんですか?
< 北島 > はい。最初はそこまでやる気はなかったんです。
ただ、コンテストで意外とベトナム人やタイ人、あと日系人も結構活躍していたんですよ。
それを見たら、「東洋人が勝てるなら、俺でもイケるんじゃないか」と思って、コンテストにチャレンジする気になったんです。
そこからは、「どれだけパーフェクトな体になるか」を追求して、ちゃんとしたトレーナーに教わりましたね。
日本での10年のキャリアは全部捨てて、一からやり直しました。最終的にはカリフォルニアのコンテストで優勝することができましたね。
<聞き手> 優勝したんですか!? すごい!
< 北島 > 当時、日本国籍の人が出られるカリフォルニア州の最高の大会で優勝することができたんです。
その結果には自分でも驚きましたが、よく考えてみたら、世界で最高の環境に住んで、世界の最高のトレーナーをつけているんだから、勝って当然なんですよね。
世界最高のジムで、世界最高のトレーナーに教わっているということは、他の人よりは断然いい条件がそろってますから。
その時に、知識がすごく大事なんだと思いましたね。知識があれば黒人にも白人にも勝てるんだということを、身をもって体験しました。
必要なのは知識と環境
<聞き手> じゃあ、元々の素質というより、知識や環境があれば変われる?
< 北島 > そうですね。素質にはいろんな角度からの素質があるんですよ。
だから、一つの角度から見て素質がなくても、別の角度から見たら素質があったりするんです。
ちゃんとした知識があれば、「素質がない」で片付けないで、「その人の素質でどういう勝ち方ができるか」「どうやっていい体になるか」が考えられる。
いいトレーナーには、それが分かるんです。ですから、素質がないと一概に決めること自体が間違いなんですよ。
<聞き手> 北島さんは身をもって体験していますが、実際にトレーニングを教える時はその人に合ったような形でされているんですか?
< 北島 > もちろん、そうです。僕は美容師をやっていたんですが、例えば髪を切る時に、「あなたは丸顔だから、この髪型はできないですよ」と決めつけるわけにいかないじゃないですか。
丸顔の人にはどういうカットをすればこの髪型が似合うのか、面長で顔が長い人はどうやって短く見えるようにするか、いろいろとカットの工夫をします。
工夫によって、その人の顔に合った髪型が作られて、カッコ良く見えるわけですよ。
筋肉のつき方も全く一緒で、手足の長さや肩幅の広さなど、いろいろな要素に合わせて、目の錯覚をうまく利用します。
ここに筋肉をつければ脚が長く見えるとか、肩幅が広く見えるとか、その人とその部位に合うように調整するんです。
筋肉をつけたり削ったりすることで、どんな輪郭の人もカッコ良くなったり、どんな体形の人もカッコいい体になることができるんですよ。
ゴールを見失わない
<聞き手> じゃあ、日本人でもカッコいい体になれますか?
< 北島 > もちろん、どんな人でもカッコいい体にはなれます。
逆に言えば、トレーニングの仕方によっては、どんな人でもカッコ悪い体になってしまう可能性もありますね。
やっぱりトレーニングやダイエットを始める時って、カッコいい体になりたくてやると思うんですよ。
鍛練が好きでやる人はあまりいないと思うんですよね。ですから、「筋肉が太くなったらゴール」じゃなくて、自分がカッコいいと思う体に近づいて初めて目的達成なんですよ。
その目的を最後まで見失わないでほしいですよね。
カッコ良くなりたいと思ったら、カッコいい体形になるまでやるんですよ。
ゴールにたどり着いていないのに、ただ太いだけの箱型の体形で、ジムで周りから「スゴイ!」と言われて満足している人がいるんですけど、「そもそも何のために始めたのか」というところに戻ってほしいんですよ。
ですから、「バランスを考えて鍛える」「この骨格だからこのトレーニングをする」という美的感覚がすごく大事になってきます。
そういうことが分からないトレーナーに教わっても意味がないので、その辺りは自分でも見極められるような知識と経験が大事ですね。
もっと楽しもう!
<聞き手> なるほど。北島さん自身もアーノルド・シュワルツネッガーを目標にして一度諦めかけたけど、目標があったからコンテストで優勝もできたし、そういう気づきもあったということですよね。
< 北島 > そうですね。やはり目標が明確であることはすごく大事です。
あと、日本とアメリカの大きな違いは、日本人はトレーニングを始めても恥ずかしがって、堂々と「カッコ良くなりたいからやる」と言えないことですね。
「鍛練したいから」「健康のために」「メタボ検診に引っ掛かったから」なんて言い訳をします。
ほとんどの人がカッコ良くなりたいと思っているはずなのに、そう言う人がほぼいないんですよね。
アメリカ人はみんな素直に「カッコ良くなりたいから」って言っちゃいますよ。もっと素直に堂々と、「トレーニングはカッコいい体になるためにやる」と認めるのが一番いいですね。
もう一つ、日本人の欠点として、「トゥマッチフォーカス(too much focus)」がありますね。
絞り過ぎってことですね。ボディビルを始めたら、ボディビルしか見えない。周りが見えなくなって、結局失敗する。
さっきの例で挙げると、カッコいい体になりたかったのに、トレーニングに熱中することによって、ジムで周りから「スゴイ!」と言われるだけで満足しているような人は、too much focus になっているわけですよね。
周りが見えてないから、周りから見て自分がカッコ良くなっているのかどうかが分からなくなっている。
トレーニングに集中しすぎて、本来の目的が見えなくなってしまうんです。
もっと多趣味で、広い視野を持ったほうがいいと思うんですよね。
僕も世界一になりたくてボディビルを真剣にやっていたけど、そんな時でもいろいろやっていましたよ。
ヒップホップのダンスが好きだったのでクラブで踊ったり、トレーニングと称していろんな国に遊びに行ったり、トレーニングの合間に有酸素運動をやったり、ビーチで流行のローラーブレードをやったり、サーフィンをやったり…。
いろんな普通のボディビルダー、日本のボディビルダーがやらないような遊びをとにかくいっぱいやっていましたね。
<聞き手> なるほど、そういう感覚が重要なんですね。
< 北島 > そうですね。いろんなところで周りの感覚を身に付けておかないと、周りの人から見た時に、自分がカッコいい体形かどうかが分からなくなるんですよ。
例えば、今の流行を知らない美容師に髪を切ってもらいたくないでしょう。
世間を知る、今の流行を知る、世の中がどういう感じで流れているかを知る。
そういうのを知って初めて体形もカッコ良くできるんです。
一点に集中して、鍛練みたいな感じでトレーニングをするのはよくないですよ。
日本のトレーニングに喝!
<聞き手> 北島さんは日本と海外の違いを知ったうえでトレーナーとして活躍されていますが、これから日本でやりたいこと、伝えていきたいことはなんでしょう?
< 北島 > 日本人は「トレーニング=鍛練、厳しい」と思っちゃっているんですよ。
でもそうだったら、アメリカで絶対に流行りません。トレーニングは本当に短時間で効果がすごく出せるものなんです。
例えば、ボディビルダーは「グッドディール(good deal)」という言葉をよく使います。
「いい取引」という意味なんですけど、「トレーニングをやったからには、いい取引になってないといけない」ってことなんです。
トレーニングは取引としてすごくお得です。ちょっとやったら、見返りが大きいですから。それを日本人に分かってほしいですね。
バランス良くついた筋肉が、カッコいい体形になるということも理解してほしいですよね。
街を歩いても、カッコいい体形で筋肉が発達している日本人がいなくて、カッコいいのは外国人だけ。だから、外国人しかカッコ良くなれないと思っている人が多いんですけど、実際にはトレーニングのやり方が悪いだけですから。
トレーニングは結構簡単にできるものだし、間違えなきゃカッコいい体形にもなれるすごくいいものだってことを伝えたいですね。
若い頃の僕と同じように、日本のボディビルだけを見て、ボディビルがダサいとか暗いとか、そう思っている若い人達がいると思うんですよ。
でも実際には、アメリカをはじめ世界各地でボディビルがすごく流行っているし、垢抜けててカッコ良くて、すごく楽しいものなんですよ。
ですから、世界で流行っている本当にカッコ良くて楽しいボディビルを、日本でもきちんとした形で広めていきたいですね。
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